チェコの国民に親しまれているミュシャ(1860~1939)の絵がみられるのはプラハ城のなかにある聖ヴィート大聖堂のステンドグラス、プラハ国立美分館(ヴェルトレズニ宮殿)、プラハ市美、そして1998年に開館したミュシャ・ミュージアム。
プラハの街を自由散策するとき、参加者のなかにはミュシャ・ミュージアムへ行きポスターを数枚買っていた女性がいた。ミュシャが好きな友人にあげるのだという。われわれが出かけたプラハ美の分館には有名な‘ジスモンダ’などのポスターも飾ってあったが、息を呑みようなすばらしい油彩に出会った。それはミュシャが1910年チェコに帰国したときに携えてきた‘スラーヴィア’
スラーヴィアは古くからスラブ民族が信仰してきた美の女神。髪に飾っているのはチェコの国の花である菩提樹の冠、そして手にはスラブ民族の連帯を表す輪をもっている。右下のギョッとするダーク色の鷲はオーストリアハプスブルク家の象徴、スラブ民族が団結して外国の支配から立ち上がるというメッセージをこめている。
この絵はアンリ・ルソーの‘私自身、肖像=風景’同様、西洋絵画が好きな人とお酒を飲み話が盛り上がるとつい調子にのってみたことを自慢し‘どや顔’になる絵。本当に一生の思い出である。ほかには日本にやって来た‘チェコの心’や‘サマリアの女’も心を打たれる。
国立新美で8日からはじまった‘ミュシャ展’は来週出かけることにしている。お目当ての‘スラブ叙事詩’全20作品は2012年の5月から2013年の12月までプラハ美で展示されたが、それと同じことが日本で実現した。まったく夢のような話。ワクワクしている。