コレッジョの‘ゼウスとイオ’(左)‘ガニュメデスの誘拐’(右)(1530年)
海外旅行の楽しい思い出も時が経つにつれてその記憶が薄れてくる。訪問した街が何度も出かけた街とはちがって回数が少ないと、ときどきアルバムなどをひっくり返してみていないと街の光景の印象がだんだん消えていく。
2003年に行ったウイーンの場合、観光名所の位置関係はもうすっかり忘れてしまったが、おもしろいことにハプスブルク家代々の珠玉の絵画コレクションがみられるウィーン美術史美の展示室の流れはまだアバウトに記憶している。
ここにある古典絵画で最も魅了されるのはラファエロ(1483~1520)の傑作‘草原の聖母’、ルーヴルにある‘美しき女庭師’、ウフィッツイにある‘ひわの聖母’とともにラファエロの聖母の定番。流石、ハプスブルク家の芸術を愛する心は高いところにある。
ラファエロの師匠ペルジーノ(1448~1523)の‘キリストの洗礼’も忘れられない一枚、このモチーフで描かれたものではウフィッツイにあるヴェロッキオの絵よりこちらのほうが川の流れが明快で人物描写がやさしい感じ。この女性的な雰囲気はラファエロに受け継がれていく。
コレッジョ(1489~1534)の‘ゼウスとイオ’を35年前はじめてみたときはドキッとした。裸婦の体を触っている得体のしれない物体は一体何なの?ギリシャ神話の話では雲に変身したゼウスが好きになったイオと浮気の真っ最中ということがわかったのはだいぶ後のこと。ゼウスは美女だけに関心があるのではなく可愛い男の子にもちょっかいをだす。なんと鷲に姿を変えてガニュメデスをさらっていく。
パルミジャニーノ(1503~1540)はこの美術館の自慢のコレクションのひとつ。4,5点みたがお気に入りは‘弓を削るキューピッド’、キューピッドのこちらに視線をむけるきりっとした目だけでなく、キューピッドの両足の間にふざけあっている二人のプットーを配置する構図が強く印象に残る。