司馬江漢の‘金沢能見堂眺望図衝立’(1789~1800年 仙台市博)
最近は日本美術の展覧会に前期も後期も足を運ぶことが少なくなっているが、サントリー美で開催中の‘小田野直武と秋田蘭画’(11/16~1/9)は気になる作品が多かったので、再度ミッドタウンを訪れた。
小田野直武(1749~1780)は惜しいことに31歳の若さで亡くなっている。その死は謎につつまれているが平賀源内(1727~1779)が1年前に獄死したことと関連があるようだ。そして、ひとつ年上の秋田藩主佐竹曙山(1748~1785)も直武の死の5年後に37歳でこの世を去る。
後期に登場した直武の洋風画も魅力あるものが多い。なかでも足がとまったのが‘鷺図’、これは数年前に行われた府中市美の江戸絵画シリーズでお目にかかった。川の水面を首をまげてのぞきこんでいる鷺がまるで目の前にいるような感じ。陰影表現と二つの大きな木を十字をつくるように配置する構図によって立体的な空間構成がなされているため、描かれている場所だけでなく画面の外の空間までイメージがひろがっていく。
今回、佐竹曙山は展示されている書簡から大変な癇癪持ちであることがわかった。それでぴーんときた。直武に比べ構図のつくりかたに切れ味があり大胆なのは曙山のこの性格からきているのではないかと。‘松に椿に文鳥図’でハットするのは丸みのある松の太い幹のむこうに椿をちょこっとみせ小枝に二羽の文鳥を描いていること。この構成はなかなか思いつかない。
後期のお目当てはじつは司馬江漢(1748~1818)だった。奈良の大和文華館が所蔵している‘七里ヶ浜図’と‘海浜漁夫図’をようやくみることができた。小さいころから海が好きなので遠くに富士山を望む七里ヶ浜の景色を立ち尽くしてみてしまう。
衝立の表裏に江の島と金沢のすばらしい眺めが描かれたものは東日本大地震で被災した石巻市の旧家の蔵からでてきたという。この幸運なめぐりあわせをふくめて江漢は全部で6点みることができた。ミューズに感謝!