明治時代に活躍した小説家、樋口一葉を描いた日本画家は2人いる。美人画の鏑木清方と京都に生まれた女流画家、北沢映月(1907~1990)。はじめて‘想’をみたとき、こちらをむいている一葉にばかり気をとられ、雪の降る背景に線描された3つの小説の主人公に注意がいかなかった。
二度目に向き合ったとき、こういう絵の構成に感心しながらみた。右が‘たけくらべ’の美登利、真ん中が‘にごりえ’のお力、そして左が‘十三夜’のお関、映月は歴史や文学上の女性を描くのに熱心で‘想’の翌年には八百屋お七も取り上げている。
森田曠平(1916~1994)の女性画に大変魅了されており回顧展に遭遇することを望んでいる。でも、なかなか実現しない。そのため縁のあった片手くらいの作品でこの画家イメージができあがっている。‘京へ’はたしか京近美の平常展示でお目にかかった。土田麦僊のほんわかした大原女とはちがって装飾的な画面構成と女たちのきりっとした目が強く印象に残っている。
濃密な色使いと精緻を極めた写実描写が心をとらえて離さない田中一村(1908~1977)の南国画、魚の図鑑をみるように画面全体を隅から隅までみてしまうのが‘熱帯魚三種’、じつはまだ沖縄に行ったことがないが、こういう絵をみると沖縄とか奄美を旅したくなる。