絵画とのつきあいがますます深まっていくのは作品が時代別にみてあるいは作家別にみてバラエティに富んでいるからだと思う。
画家のなかには色の深さが半端でないとかモチーフの描写に圧倒的なリアルさや細密さをもっているといった理由で絵の前に立つと体が引き締まるような画家がいる。日本画では速水御舟、東山魁夷、杉山寧、徳岡神泉、横山操、高島野十郎。
杉山寧(1909~1993)の回顧展を長いこと待っていたが、3年前ようやく日本橋高島屋で実現した。そして、杉山寧のコレクションでは最も数を揃えている箱根のポーラ美でも大半お目にかかったので今はひと段落といったところ。心惹かれる作品が多いのでどれをMyベストにするか苦労する。どうしても外せないのは‘水’、大きな画面に描かれているのはナイル川を背にして立つエジプトの女性。‘穹(きゅう)’同様、忘れられない一枚。
夕焼けの絵をいろいろみたが、胸が締め付けられるような気分になるのが横山操(1920~1973)の‘ふるさと’、遠くの山並みに沈む夕陽のインパクトの強さはBS2の‘体感!グレートネイチャー’にでてくる絶景をみたときの緊張感にも通じる。大自然の風景はただ美しいというだけではない、ときには怖さを感じることもある。この絵にもそんなイメージがある。遠くの夕日は心をざわざわさせるのに手前は静かでとても淋しい思いにかられる。
今年の4月待望の高島野十郎(1890~1975)の回顧展(目黒区美)に遭遇した。いつかみたいと願っていたのが‘雨 法隆寺塔’、関心の的は細い線を何本も描いて表現した雨、われわれは広重の絵をみているから雨が線で表現されていることにとくべつ驚きはしないが、じっとみていたら本当に弱い雨が降っていた。