今月TV東京の人気番組‘美の巨人たち’にゴッホ(1853~1890)の‘タンギー爺さん’が登場した。ゴッホにはいい肖像画が何点もあるが、このタンギー爺さんはお気に入りのひとつなので、どんな切り口で番組が構成されるのか興味津々だった。
大きな収穫はタンギー爺さんの話、これまでタンギーにいだいていたイメージは売れない画家たちを支援する気にいい爺さん、かみさんからはやいのやいの言われながらゴッホに絵と引き換えに絵具を渡してやるというくだりはいつもほろっとくる。ここまではゴッホ物語にはよくでてくる話。
今回、タンギーの人生まで深く掘り下げていた。タンギーは1871年3月、自治政府パリコミューンが結成されたとき、これに参加していた。こんな正義感の強い骨のある人物だったとは!だから弱い者、恵まれない者に優しいのである。
ゴッホは世話になった人の肖像画には気持ちがはいるのかこの‘タンギー爺さん’はとてもいい出来映え。ロダン美を訪問したときじかに向き合ったが、日本にもやって来た。今から15年前、山口県萩美・浦上記念館で開催された特別展‘ゴッホと浮世絵 タンギー爺さん’、ちょうどこの頃広島にいたので、クルマで萩をめざした。
ゴッホがパリに滞在していたとき描いた最もいい肖像画がこの絵、そしてパリから移ったアルルでもいい肖像画が生まれる。アルルでうまがあった郵便配達夫ルーランと夫人の肖像、それぞれ複数枚描かれたが、ボストン美にある2点は傑作。これもタンギー爺さん同様、My‘好きなゴッホの肖像画’に登録している。
昨年12月にでかけたボストン美では再会を楽しみにしていたルーラン夫婦だったが、不運にも旦那のほうは姿をみせてくれなかった。残念!
今年は秋に東京都美で‘ゴッホとゴーギャン展’(10/8~12/18)がある。どんな作品がでてくるのか情報がないが、ヒットを連発している東京都美のことだからきっと目を楽しませてくれるだろう。期待して待ちたい。