日本画への関心が深まってくると名作を残した画家の人生についての情報も集めたくなる。そこで、まず画集や回顧展で入手したなどを参考にしてどんな画業をたどったのかがインプットされる。さらにそこに追加されるのが画家自身の性格やキャラクター。こちらの話は画家のイメージをつかむのにより役立つこともある。
小林古径(1883~1957)は寡黙な人だったらしい。芸術家でおしゃべりな人は少数派だろうから、口数が少ないのが普通と思われるが、古径や川端龍子(1885~1966)はほとんどしゃべらないタイプの画家。
‘鶴と七面鳥’は古径の作品のなかでは最もいい絵かもしれない。はじめてお目にかかったとき、びっくりしたのは鶴の生き生きした姿、うずくまる七面鳥をみて‘やーやー、七面鳥ちゃん、元気、なにかおもしろいことない?’なんて語りかけているような感じ。この鶴の動に対して、石榴の枝の下にいる七面鳥は静の構え。本当にいい絵。
竹内栖鳳(1864~1942)の‘おぼろ月’は長年追っかけていた作品。2年前ようやく対面が叶った。絵の存在を知ったころは個人蔵だったが、今は京近美のコレクション。ずっと惹きつけられていたのは月をながめる狐の後ろ姿。こういうアングルから狐をとらえるのは栖鳳のならではの感性。ぱっとみると平板なイメージだが、しばらくみているとしっかり奥行きのある画面になっていることに気づく。
平福百穂(ひらふくひゃくすい、1877~1933)の‘玉柏’は近代琳派を思わせる作品、。連想させるのは鈴木其一(1796~1858)、左隻に描かれた岩の間を進む渓流は根津美にある‘夏秋渓流図’を彷彿とさせる。写実と装飾性をうまく融合させた近代感覚の風景画、今見ても新しさがある。