ムニョス(1953~2001)が制作する人間の彫刻はどれも灰色一色、笑うのは東洋人だけかと思ったら西洋人もまた笑っている。‘小さな椅子に座る2人’は仏像好きの人がみたら‘空也上人をみたでしょう!’というにちがいない。
‘空也上人像’(重文 京都・六波羅蜜寺)の開いた口からは六体の阿弥陀仏が吐き出されている、これをムニョスは真似て左の人物の口からは針金でつないだ小さな立ち姿の像が6つでている。アートは時をこえてつながっている。鎌倉時代の仏師と現代のアーテイストの響き合いに乾杯!
ブラジルの現代美術家、ヴィック・ムニーズ(1961~)の個性的な作品をみると、アートにおけるモチーフの形は絵の具だけによって生み出されるものではないことがよくわかる。有名な体操選手コマネチの演技を撮影した報道写真をムニーズはインクで模写して、それを写真におさめている。ほかにもチョコレートや宝石を使ったものもある。
ビデオ・アートの作家を何人も知っているわけではない。最初に見た作品の質がいいとそのあとほかの作品をみたときそれが効果的なレファランスの役目を果たしてくれる。そういう意味でビル・ヴィオラ(1951~)との出会いは貴重な体験。映像は絵画や彫刻と違って作品の表現意図を受けとめるのに時間がかかるが、腰をすえてみると物語性のあるメッセージは心に深く刻まれる。
‘アニマ’が表現しているのは人間のもっている4つの感情、‘喜び’、‘悲しみ’,‘怒り’,‘怖れ’、生来人の顔をみるのが好きだから3人の表情がだんだん変わっていく映像に強く引き込まれていく。
小さな女の子が作品をみたらとびはねて喜ぶだろうなと思わせるのがメサジェ(1943~)の‘’残りもの(家族Ⅱ)、動物の人形などの衣裳や布でつくった小物の飾り物が白い壁に打たれた釘にいっぱい括り付けられている。