天才と呼ばれる芸術家に共通する特徴はその作風の幅が広いこと。仁阿弥道八(1783~1855)の生み出すやきものもバラエティに富んでいる。これほどなんでもこなせる陶工とは思わなかった。
入館してすぐ度肝を抜かされたのは楽焼と野々村仁清の写し。200%参った!本歌の楽道入の‘黒楽四方茶碗 銘山里’が横に並ぶ‘富岳文黒茶碗’、写しの技術の高さだけでなく本歌を上回るほどの輝きをみせる豊かな芸術性にはほとほと感服させられる。
そして、‘色絵筋文入子茶碗’の美しいこと、まさに仁清が生き返ってまた作陶している感じ。この煌びやかさにあふれる意匠を釘付けになってみていた。楽焼も仁清もこれほど高いレベルで写すことができれば、茶道具の注文が殺到したにちがいない。
道八の彫塑的作品は京博であった京焼展(2006年)で少し目が慣れている。今回はそのヴァリエーションがぐんとふえた。全部で16点でている。肩の力が抜けリラックスした気分でみれる作品ばかり。そのなかでとくに楽しかったのがチラシに大きく載っている‘色絵寿星立像’と猿の置物。
愛嬌のある顔をした寿星(寿老人)、大きな頭は一度見たら忘れられない。また大きな福耳と左手にもつ桃をみるのも縁起がいい。正月にこんないい寿星に出会ったから今年は幸運がやってくるかもしれない。
そして、長くみていたのが可愛い小猿の置物。近づいてみるとふさふさした毛の感じがじつによく表現されている。これは心が和らぐ。