美術館が所有する作品のなかには門外不出的な扱いを受けているものが必ずある。NYのMoMAの場合、ウォーホル(1928~1987)の‘ゴールド・マリリン・モンロー’もその一枚。昨年、ここを久しぶりに訪問しじっくりみた。
MoMAのモナリザと呼ばれているこのマリリンモンロー、背景に使われた黄金が1962年の8月4日に睡眠薬を飲みすぎて亡くなったマリリンモンローを神々しく浮き上がらせている。まさに黄金の肖像画。
そして、目に焼きつくのが緑のアイシャドー。じっさいにこんなアイシャドーをして街を歩く女性は仮想行列とかサーカスのピエロに変身するようなときくらいしか見ないのに、色彩感覚の豊かなウォーホルにかかるとこの化粧が見る者をワクワクさせる。
ローゼンクイスト(1933~)もウォーホル同様、モンローの死にすぐさま反応、‘マリリン・モンロー Ⅱ’を描いた。画面を4つに仕切ってそこに分解されたマリリンの顔の一部を2枚は逆さまにして張り付けた。
この逆さまの画像を組みこむのはローゼンクイストのお得意の手法。はじめは面食らうが、慣れてくると逆さでも落ち着いてみれるようになり、ダイナミックにトリミングされた雑誌や広告などの写真に好奇心を強く刺激される。
MoMAをはじめて訪れたのは24年前、そのころはシャガールの‘私と村’やピカソの‘アヴィニョンの娘たち’といった教科書に載っている作品の鑑賞に夢中、だからシーガル(1924~2000)のシの字も記憶に残らない。注意が向かっていないと見れど見えずになる。
昨年は前もって作った必見リストに‘バスの運転手’に入れ、この日常風景の一角を切り取った彫刻作品をぐるぐるまわってみた。運転手が目の前にいるようだった。
絵の具をカンバスにうすくしみこませて色の面をつくるルイス(1912~1962)の‘第三要素’にすごく興味があるが、まだ縁がない。にじみのある色彩世界は水墨画を見慣れているからいろいろと想像が膨らむ。互いに重なり合いながら垂直にのびる赤や緑などの色のコラボをいつかみてみたい。