‘シェーブルから見たレマン湖’(1905年 ジュネーブ美術・歴博)
‘白鳥のいるレマン湖とモンブラント’(1918年 ジュネーブ歴博)
‘シャンベリーで見るダン・ブランシュ’(1916年 オスカーラインハルト美)
西洋美で開かれている‘ホドラー展’(10/7~1/21)に出品されている105点のうち特別に親しみを覚えるのが風景画、若い頃ジュネーブに住んでいたのでホドラー(1853~1918)の絵にレマン湖やモンブラントなどがでてくる思わずじっとみてしまう。
‘シェーブルから見たレマン湖’で強く印象に残るのはおもしろい形した雲、なにかキセルの先のようでもあるし取っ手をぐしゃっと押しつぶしたようにもみえる。この白い雲がペアとなって上と下に描かれている。雲だけをみるとこれは平面的な構成、でも湖岸に建ち並らぶ家々は上から見ているように描かれているのでこの部分は立体的になっている。このあたりには視線はあまりむかわない。だから、この絵は意匠性のあるポスターのような作品として記憶されることになる。
このデザイン的な感覚は最晩年に描かれた‘白鳥のいるレマン湖とモンブラント’の下にみられる白鳥でも同じ。手前は白鳥を同じフォルムで何度も描く一方で、レマン湖のむこうのモンブラント連峰は装飾性を排し一定のリズムに収まらない自然の生命力を象徴するかのように荒々しく表現している。
今回‘シャンベリーで見るダン・ブランシュ’と同じスタイルで描かれた山の絵が5点でている。共通するのは雲の描き方。画面の上部に描かれた雲の流れは部屋の窓につけられた白いカーテンのように思える。まさにカーテン越しに安定感のある二等辺三角形の山をみている感じ。アルプスの山々は険しい山なのにこういう装飾的な飾りがついていると優しい感じがするし、絵全体がデザイン的なイメージになる。
‘シャンベリーの渓谷’には自然を最接近してみるときに感じるおもしろさがある。並みの画家ならこういうごつごつした岩のある光景をこんなに近くに寄って描くことはしない。それよりはロングショットで渓谷の心惹かれる風景を描写する方がいい。ところが、ホドラーはこの迫力ある岩の姿に強いリズムを感じて形のそれぞれ違う大小の岩々を統一的に構成していく。不思議な魅力を発するこの絵をしばらくみていた。