国宝‘青磁下蕪瓶’(南宋時代・12~13世紀 アルカンシェール美)
5月の終わりから東博の東洋館で行われている‘日本人が愛した官窯青磁’(10/13まで)は大きな勘違いがあった。パンフレットタイプの立派なチラシが作られているのでそこそこの青磁の展覧会だろうと思っていたら、実際は5階の展示室のほんの一角を使ったミニミニ青磁展だった。
チラシはその展覧会へ行くまえにはさらっと見る程度でどんな作品が目玉かは頭に入っても作品の数までイメージできない。陶片を除くと17点。やきものは小さいから動かなくても体をぐるっとまわせば全部みえる、ありゃー、これだけかい!拍子抜けした。
数の少なさには参るが、満足度が低かったということはない。10分ほどしかいなかったが青磁はやはり特別な中国陶磁だから、楽しむところはしっかり楽しんだ。その一番が国宝の‘青磁下蕪瓶’、この蕪を連想する丸い形に大変魅せられている。東博ではこの名品が平常展示に度々登場する。アルカンシェール美が展示依頼に気軽に応じてくれているのだろう。そのおかげでほかの美術館での公開を含めて都合7回くらいみた。何度みてもぐっと惹きこまれる。
東博蔵の‘青磁輪花鉢’と常盤山文庫から出張してきた黄色の青磁‘米色青磁瓶’もお気に入りの一品、色の違いはあるがガラスを思わせるつるつるした質感と貫入の美しさには昔から目を奪われている。日本だけにある米色青磁は4年前に根津美であった‘南宋の青磁’に4点全部揃ったが、今回は常盤山文庫の3点が存在感を発揮している。
収穫は胴に刻まれた浮彫り風の牡丹唐草文がとても印象深い‘青磁刻花牡丹唐草文水注’、以前ギメ美が所蔵する鳳凰の口をもつ同じタイプの水注をみて感動したことがあるが、そこにも牡丹が見事に彫られていた。今回チラシで気になっていた牡丹唐草文もなかなかの名品だった。