美術館には絶対外に出さないと決められている、いわゆる門外不出の作品、ないしはそれに近い扱いの作品がある。例えば、クレラー=ミュラー美だとゴッホの‘アルルの跳ね橋’。
アメリカの美術館ではボストン美にあるサージェントの‘エドワード・ダーリー・ポイトの娘たち’、ゴッホの‘郵便配達夫ルーラン’、日本でボストン美名品展が何度も開催されるのにこの2点はいまだにやって来ない。NYのMoMAはピカソの‘アヴィ二ョンの娘たち’、モンドリアンの‘ブロードウエイ・ブギウギ’、ウォーホルの‘ゴールド・マリリン・モンロー’、そしてワイエスの‘クリスティーナの世界’。
昨年、現地でクリスティーナと二度目の対面をしたが、やはりこの絵の前に立つとしみじみ名画だなと思う。クリスティーナは足が不自由だということを知ってるから、ついつい感情移入してしまう。ワイエス(1917~2009)の回顧展に遭遇することを夢見ているが、果たして。
2009年に世田谷美で‘メキシコ20世紀絵画展’が開催され、念願のフリーダ・カーロ(1907~1954)に出会った。それがメキシコの民族衣装の身を包んだ‘メダリオンをつけた自画像’、じつはカーロの作品はこの絵とMoMAでみた‘変化と私’、‘私の家族’の3点しか縁がない。これではカーロには全然近づけないのでいつかまとまった形でみる機会に出くわすことを祈っている。
イタリアの彫刻家、マリーノ・マリーノ(1901~1980)の作品はローマの国立近代美を2度訪問したので少し目が慣れている。また、ブリジストン美とヴェネツィアにあるグッゲンハイム美でもマリー二の彫刻体験した。そのなかで最も印象深いのがグッゲンハイムの‘町の天使’、部屋ではなく中庭に展示されている。
頭と胴体が水平に形づくられた馬に腕を真横にのばした天使がまたがっている。元気いっぱいの天使とだらっとした馬のコントラストがおもしろい。一目見たら忘れられない作品。
ロンドンのテートモダンにあるポロック(1912~1956)の‘サマータイム’は心が浮き浮きしてくる極上のドリップ絵画、画面に飛び散る黄色と青、そして少しばかり赤の色面が色彩美をこれでもかと主張している感じ。縦85cmだが、横はどーんと5.5mもある。理屈抜きで楽しめる抽象画の傑作。