キルヒナーの‘コーヒーテーブル’(エッセン フォルクヴァング美)
シュルレアリスム運動がはじまったのは1924年、ブルドンの仲間になったミロ(1893~1983)がシュールな感覚をおおいに発揮して描いたのが‘農園’のシュールヴァージョン‘耕地’。
この絵を23年前セゾン美でみたことでミロ好きが決定的になった。じつに楽しい絵、右には目と耳をもった松の木が描かれ、そのまわりに三角の帽子を被ったとかげや大きなかたつむりがいる。ほかにも鶏、兎、牛、犬、馬がおりとても賑やかな農園の風景。
ここに場違いな新聞がある。一体誰が読むの?とかげの頭に帽子をのっけたはずみで新聞がでてきたのはピカソのコラージュの影響だろう。左で目と耳の木とバランスさせているのが前衛的な生け花を連想させる木と鋭く上にのびるギザギザの葉、赤塚不二夫はこの絵をみてニャロメを生み出したにちがいない。
マン・レイ(1890~1976)の‘アングルのヴァイオリン’が目の前に現れたとき、素直にすごい絵だなと思った。キキの後ろ姿を写した写真にインクでヴァイオリンのf字孔が描き入れられている。これがキキのお尻の形にぴったり合っている。こういうフォルムの親和性をぱっと思いつくマン・レイ、‘どお、違和感ないだろう!’といわれているよう。
NYにある美術館にはシャガール(1887~1985)の傑作がいくつもある。MoMAの‘私と村’、‘誕生日’、そしてグッゲンハイムには‘ヴァイオリン弾き’、‘窓から見たパリ’、‘お茶を飲む兵士’、‘画家の妹’、My‘シャガールベスト5’で外せないのは‘私と村’と‘ヴァイオリン弾き’
‘ヴァイオリン弾き’が目に焼きついているのは衣服の紫と緑の顔と手が印象深いから。緑の顔が強烈なイメージ、これほど強い緑をみるのはあまりないが、この緑一色だけで神秘的な夢の世界が伝わってくる。シャガールは‘ヴァイオリン弾き’の画題を繰り返し描いており、以前訪問した鹿児島市の長島美にもこの絵とよく似た別ヴァージョンが飾ってあった。
キルヒナー(1880~1938)の‘コーヒーテーブル’、細長いカマキリのような人物がインプットされているキルヒナーの作品とはうって変わってなんとも穏やかで心がほっとする絵。コーヒーを一緒する家族、ここには普通の家庭の小さな幸せがある。