‘長崎十二景 浦上天主堂’(1920年 福田美)
美術とのつきあいが深くなると、ときどきメディアが報じる有名な画家の作
品が美術オークションで最高値で落札されたという話や新たに発見された作
品などの情報は大きな関心をもってインプットされ、その情報をメモした
り新聞記事を切り抜いたりする。そして、いつか展覧会で公開されるだろう
かとぼんやりと考える。
先月の25日まで東京都庭園美で回顧展が行なわれていた竹久夢二
(1884~1934)は新発見の油彩が2点登場し、目を楽しませてくれ
た。同じ画家の回顧展を何度も体験するとこういう嬉しい対面が実現する。
夢二の特別展に出かけるたびに驚くのは会場に大勢の女性がいること。
そのためかこれまでデパートのなかにある美術館で行われることが多かった。
7割がデパートで3割が美術館という感じ。
2003年、夢二展をはじめてみるため足を運んだのは尾道市美。この頃
広島で仕事をしていたので喜び勇んでクルマを走らせた。これはエポック的
な鑑賞だったので、その図録は今でもときどきながめている。郡山市美のあ
と尾道市美、駿府博、奈良県美を巡回した。4つの地方都市をまわったので
展示作品はところどころ違っている。ところが、図録には出品された作品は
全部掲載されているので、これが展示されてた?という戸惑いが生じた。
当時はまだ展覧会に場慣れしてなく、出品リストのことも知らないので、
図録の末にでている各美術館の出品表を確認してようやく心のもやもやが
解消された。
他館で出品された絵であとから惜しいことをしたなとつくづく思ったのが河村コレクション(現在は京都の福田美の所蔵)。‘長崎十二景’のうち尾道で飾られたのは‘眼鏡橋’など4点のみ。‘浦上天主堂’はやって来なかった。でも、展示されていた4点もみたという実感が記憶に残ってない。それはなにしろはじめての夢二だから、‘秋のいこい’(夢二郷土美)などに気をとられ、このシリーズへの関心が薄かったのかもしれない。河村コレクションはその後、夢二展が開催されるときはいつも期待していたが、残念ながら大変綺麗な女性に惹かれる‘旅’や‘切支丹波天連渡来之図’、そしてムンクの油絵をみている感じの‘青春譜’との出会いは果たせてない。福田美の企画展計画を定点観測することにしている。