2022年の暮れにサントリー美で‘京都・知恩院の名宝’展が開催され、長谷川
等伯の国宝‘楓図’を京都に出かけなくても鑑賞できるという願ってもない幸運に
恵まれた。そして、まったく予想してなかった絵に遭遇した。それは京都市生
まれの堂本印象(1891~1975)の‘婦女喫茶’。これは智積院の宸殿
(客間)の襖4面に描かれたもので以前からみたかった作品だったから、
一気にテンションが上がった。まるで道を歩いていたら突然、宝物が降ってき
たような感じである。
以前、毎年のように京都へ出かけていたとき、立命館大のすぐ近くにある京都
府立堂本印象美へは2度足を運んだ。じつはこの画家の回顧展は一度もめぐり
あってないが、2000年日本橋高島屋であった特別展の図録をなにかに機会
に手に入れていた。そこにこの美術館が所蔵するもの(絵画、陶芸)や京都に
ある智積院や西芳寺(苔寺)の障壁画などがたくさん載っていた。これでいっ
ぺんに堂本印象のファンになった。
2度の訪問で美術館にあるものはだいぶ目のなかに入り、ボッティチェリの‘ビーナスの誕生’を想い起こさせる‘木華開耶娞’に出会ったことで満足度はMAXに達しているが、まだ思わず足がとまる‘観世音’や‘女人出定’などが残っている。そして、長年追っかけている京都市京セラ美蔵の‘婦女’との対面が実現していない。
兵庫の明石市の出身で鏑木清方に師事した寺島紫明(1892~1975)の描く美人画にも大変魅了されている。堂本の‘婦女’同様、‘昭和の日本画100選’展(1989年 朝日新聞社)に選ばれた‘彼岸’はずっと気になっている絵だが、なかなか縁がない。また、舞妓を横から描いた‘春秋夕朧・春’も2007年にあった‘日展100年’(国立新美)で展示替えのため見逃した。