池上秀畝の‘十六善神図’(1896年 伊那市高遠町・清福寺)
明治以降に活躍した日本画家で一生つきあっていこうと思っているのは、横山大観、菱田春草(1874~1911)、上村松園、鏑木清方、東山魁夷、加山又造の5人。だから、ほかの画家比べるとまだみていない作品に強いこだわりがある。2014年、東近美で大ホームランといっていいほどの大菱田春草展が行われた。おかげで追っかけリストに載せていたものがどどっと出品され、天にも昇る気持ちだった。
リストに残った作品でまだまだ諦められないのがある。1907年に描かれた‘月下の雁’。広重の雁の絵にとても惹かれるが、春草のこの絵も強く印象に残る。もうひとつみたくてしょうがない‘砧’は同じく個人蔵。美術本には載っているが展覧会にはなかなか姿をみせてくれない作品は多いが、こういう場合回顧展開催にむけて学芸員が奔走しても所蔵しているコレクターがNGをだすのか、あるいはどこにあるのか不明といったことなどその理由はいろいろあるのだろう。これに対し播磨屋本店蔵の‘帰舟’はなんとかなりそうだが、果たして、願いが叶うか。
今年は春に春草と同い年でしかも長野の同じ地域で生まれた池上秀畝(いけがみしゅうほ、1874~1944、現伊那市出身、春草は飯田市)の回顧展(練馬区美)に遭遇した。画家の名前は以前三の丸尚蔵館で200%KOされた‘国之華’でインプットされていたが、回顧展によって画業全体を知ることができるとは思ってもいなかった。そのすばらしい作品を2回アップしたが、ほかにも長野の美術館で出品されるもののなかにいくつもある。
‘十六善神図’は思わず足が止まりそうな力作。伊那市高遠町にある清福寺にあるから、長野を旅行したときはみれるチャンスがある。釈迦如来、文殊菩薩、普賢菩薩の釈迦三尊から夜叉神、玄奘三蔵まで細部をこれほど丁寧に描き込まれた仏画はそうないから一見の価値がありそう。個人蔵の‘蜀桟道’もすごく気になる絵。三国志で知った険しい交通の難所、蜀桟道の光景が緑青を多用して力強く描かれている。