デューラーの‘ヒエロニムス・ホルツシューファー’(1526年 ベルリン絵画館)
‘エルスベト・トゥ―ハーの肖像’(1499年 カッセル絵画館)
クラナハの‘横たわる泉のニンフ’(1518年 ライプツィヒ造形美)
‘エジプトへの逃避途上の休息’(1504年 ベルリン絵画館)
ドイツ・ルネサンスを牽引したデューラー(1471~1528)とクラナハ
(1472~1553)は同時代を生きた大画家であるが、関心はデューラー
のほうに長くむかっていた。二人の絵をみれる美術館でまず思い浮かぶのは
ウィーンの美術史美とミュンヘンのアルテ・ピナコテーク。美術史美で印象深
いのはデューラーは‘皇帝マクシミリアン一世’、クラナハはとても怖い‘ホロフ
ェルネスの首をもつユディト’。一方、アルテ・ピナコテークはデューラーの
イケメン自画像が目に焼きついているが、クラナハは印象が薄い。
クラナハに勢いがでてくるのはボルゲーゼやクレラー=ミュラー、ベルギー王立美などで遭遇した‘ヴィーナスと蜂の巣をもつキューピッド’。ちょっと艶めかしいヴィーナスにだんだん嵌っていった。そして、予想だにしなかった日本で開催されたクラナハの回顧展(2017年 西洋美)。目玉はあのユディト。これは強烈なインパクトがあるから、クラナハ恐るべし!と思った人が多くいるのではなかろうか。
今、狙っているデューラーは肖像画2点、55歳のときに描いたニュルンベルクの市長とそれよりずっと前に仕上げた同じくニュルンベルクの名家の人物の妻。そして、長く鑑賞意欲を持ち続けているのがウィーンのアルベルティーナ・コレクションの‘野兎’。この兎をはじめてみたとき、デューラーの迫真性のある描写に目を奪われた。ウイーンにでかけることがあれば、なんとかしようと思っている。
クラナハはまだ縁がない傑作がたくさんある。その筆頭が‘ヴィーナスとキューピッド’同様心をザワザワさせる‘横たわる泉のニンフ’。10点以上のヴァージョンがあるとされるこの絵はワシントン国立美蔵のものをみたが、回顧展にも出品された。デューラーとの画風の違いでいうと、クラナハで興味深いのは馴染みの画題の背景に風景が描かれていること。‘楽園のアダムとエヴァ’や‘エジプトへの逃避途上の休息’にとても魅了されており、本物をじっくりみてみたい。