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‘神奈川沖浪裏’(1830~33年 すみだ北斎美)
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‘飛越の堺つりはし’(1834年 大英博)
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‘下野黒髪山きりふりの滝’(1833年 東洋文庫)
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‘潮干狩図’(重文 1807~10年 大阪市美)
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‘女波図’(1845年 北斎館)
手元にある浮世絵関連の図録で数が一番多いのはやはり葛飾北斎(1760
~1849)。2005年、はじめて大規模な北斎展(東博)に巡り合って
以来、北斎の回顧展があるという情報が入ると欠かさず足を運んできた。
2017年にも大阪のあべのハルカス美で感動の特別展が開催されたので
ウキウキ気分で新幹線に乗り込んだ。
北斎の風景画でもっとも有名なのが‘富嶽三十六景 神奈川沖浪裏’。この巨大
な波の化け物が下の小舟に襲いかかるようにもみえるという意表をつく表現
が日本人だけでなく世界中の浮世絵ファンや美術愛好家たちを魅了してきた。
最近よく聴くフランスの作曲家ドビュッシーもこの絵に霊感を受け交響詩‘海’
を作曲した。遠くで静かにそびえる富士山を画面の下に配置する構図にして、
ダイナミックに揺れる波の光景を圧倒的な迫力でみせるというのは北斎にし
か描けない世界。この構想力は本当にスゴイ!
諸国名橋奇覧シリーズでお気に入りなのが‘飛越の堺つりはし’。現実にはあり
えない橋がさもありそうに描いてみせるのが北斎流。これをみるたびに映画
‘インディ・ジョーンズ 最後の聖戦’の有名な奇跡のシーンを思い出す。
そして、諸国滝廻りの‘下野黒髪山きりふりの滝’には‘神奈川沖浪裏’でみた波
の怪物の存在とつながる感じがする。エネルギーを相当ため込んだ滝の暴れ
ん坊がそのパワーを見せつけているように映る。
風景画を肉筆で描いた‘潮干狩図’は東博の回顧展でお目にかかった。潮のひい
た広い砂浜のあちこちで潮干狩りを楽しむ人々の様子が生き生きと描かれて
いる。視線を画面のなかで移動させると近景、中景、遠景に描かれたモチー
フのサイズが変化していくので、目の前の大空間をみている感じ。こういう
風景画はあるようでなかなかみれない。
長野県小布施町にある北斎美を訪問したことは生涯の思い出である。ハイラ
イトは北斎が85歳ころに描いた2台の屋台の天井画、画像は‘女波図’でもう
ひとつの‘男波図’とセットになっている。‘神奈川沖浪裏’の荒れ狂う波濤が
再現したかのようで背景の回転するトンネルのなかに次第に吸い込まれてい
く状況をイメージさせる。まるでブラックホールに飲み込まれる場面をみて
いるよう。