国宝 銭選の‘宮女図’(元13世紀)
夏珪の‘山水図’(重文 南宋~元13世紀~14世紀 畠山記念館)
趣味の世界でも目標とか望みを心にもっておくとその楽しみが長く続けられる。
知人に‘日本百名山’の登山を達成し、またやりはじめた人がいる。絵画が好きに
なり展覧会へ出かける回数が多くなるにつれて、日本や中国でつくられた美術
品で国宝に指定されているものを全部みてやろうと思うようになった。絵画、
やきもの・蒔絵のなどの工芸品、彫刻、建物、書、、分野が多岐にわたるので
まずは絵画と工芸のコンプリートをめざすことにした。
絵画については片手くらい残っているが、観たい作品はほぼ目のなかに入れる
ことができた。中国絵画でその追っかけが長く続いたのが徽宗(1082~
1135)の‘桃鳩図’。これは個人の所蔵でようやくお目にかかれたのは
2014年。2004年、この絵は根津美で開催された‘南宋絵画展’に出品され
たが、わずか5日しか展示されず鑑賞のタイミングはあわなかった。それから
リカバリーに10年もかかった。だから、かわいい感じのする緑鳩(あおばと)
の側面から描かれた姿をみたときは本当に嬉しかった。‘風流天子、すごいじゃ
ないか!’と乾杯したくなった。
名古屋の徳川美に出品されていると知ってすぐ新幹線に乗ったのが‘宮女図’。
これも個人蔵。京博に寄託されているが、どういうわけか縁がなく、2008年
の‘室町将軍家の至宝を探る’展で長年の思い丈を叶えることができた。男装の
宮女がふれ合わせた右手の親指と左手の小指の爪先をじっとみつめている。こう
いう仕草で描かれるとどうしても夢中になる。この特別展には京都の泉屋博古館
蔵の‘秋野牧牛図’はでていたが、もう展示期間が終わっていた。残念!でも運が
いいことに次の年に京都で披露されたので、喜び勇んで美術館を訪問した。紅葉
の下で母子の水牛と手前のほうにもう一頭が描かれている。木の陰に座る牧童二
人はほかのことに熱中して、牛が離れているのに気づかない。秋ののどかな
光景に大変惹かれた。
久遠寺の‘夏景山水図’は渓谷の間を風が吹き抜けるなか高士が橋の上で杖をもって対峙している。このスピード感がなんともいい感じ。美術本でみて本物といつかと願っていたが、根津美の‘南宋絵画展’で遭遇することができた。そして、よく通っていた畠山記念館で展示をずっと待っていた夏珪の‘山水図’は待てどなかなか会えなかった。やっと目の前に現れたのは徳川美の2008年の展覧会。じつにバランスがとれ安定感のある水墨風景画ですごくいい気持になる。いつか再会したいが、畠山でみれるだろうか。