Quantcast
Channel: いづつやの文化記号
Viewing all articles
Browse latest Browse all 4049

Anytime アート・パラダイス! パトロン物語(14)

$
0
0

Img_0001_20220408223901  アルバート ・C・バーンズ(1872~1951)

Img_0004_20220408223901   セザンヌの‘大水浴’(1900~1905年 バーンズコレクション)

Img_0005_20220408223901   セザンヌの‘カード遊びをする人たち’(1890~92年)

Img_20220408223901   スーラの‘ポーズする女たち’(1886~88年)

Img_0002_20220408224001   スーチンの‘小さな菓子職人’(20世紀)

Img_0003_20220408224001   マティスの‘ダンス’(1932~33年)

コートールドコレクションが披露された1984年の10年後、日本の展覧
会シーンにおけるひとつの‘事件’ともいえる‘バーンズコレクション展’
(1994年 西洋美)が開かれた。当時NHKの日曜美術館にとりあげら
れるなど大きな話題になった。アルバート・C・バーンズ(1872~
1951)は製薬業で大金持ちになったアメリカ人。彼が収集した印象派や
スーラ、マティスなどの名画はフィラデルフィア州メリオンのバーンズ財団
美から外にでたことのない秘蔵のお宝だった。それがギャラリーを改築する
ことで休館になったため、ワシントン、パリ、東京で公開されることになっ
た。このすばらしいコレクションに巡りあえたのは一生の思い出である。

セザンヌ(1839~1906)の‘大水浴図’は3点ある。所蔵するのはロン
ドンのナショナルギャラリー、フィラデルフィア美、バーンズコレクション。
バーンズは1933年画商のボラールから買った。4年後、フィラデルフ
ィア美が別の‘大水浴’を手にいれることになったとき、記者会見で‘近郊の
バーンズ美にはひと回り小さい二番手の作品がある’と説明してしまった。
これに激怒したバーンズはすぐ記者を集め、‘私の絵は断じて二番手ではない。
うちのは完成作だが、むこうはスケッチのようなものだ’と反論した。

オルセーとコートールドにある‘カード遊びをする人たち’に登場する人物は
2人なのに対して、メトロポリタンのものは4人になり、バーンズコレクシ
ョンのヴァージョンではさらに女の子が加わり5人。そのため、絵のサイズ
は縦1.3m、横1.8mの一番大きな絵になっている。セザンヌのこの
シリーズに魅了されているので、夢中になってみた。

アメリカの美術館にはかなりの数のスーラ(1859~1891)があるが、
この頃はまだこの点描画家との縁は薄かった。だから、日本で‘ポーズする女
たち’に出会えたことは夢のよう。お陰でスーラはシカゴ美の‘グランドジャッ
ト島の日曜日の午後’など主要な作品はだいたいみることができた。
そして、スーチン(1893~1943)はパトロンのバーンズの支援によ
って一流画家の仲間入りしたことを知ったのもこの展覧会。‘小さな菓子職人’
をそうだったのか、とまじまじみていた。

セザンヌ、スーラとともに目玉の絵がマティス(1869~1954)。
‘生きる喜び’や‘リフ族の男(座るモロッコ人)’、‘3姉妹’、‘音楽のレッスン’
など全部で14点。まさにミニマティス展。バーンズはマティスに壁画‘ダン
ス’の別ヴァージョンを依頼しているが、この絵とはまだ縁がない。フィラデ
ルフィアに移った美術館をいつか訪問してみたい。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 4049

Trending Articles