‘ムーラン・ド・ラ・ギャレット’(1900年 グッゲンハイム美)
今年は国内の多くの美術館で足を運びたくなる特別展が1年中切れ目なく行
われる。近現代アートにも期待値の高いものがあるが、そのなかにピカソ
(1881~1973)が入っている。イスラエル博所蔵品で構成される
‘ピカソ ひらめきの原点’(4/9~6/19 パナソニック汐留美)と‘ベル
クグリュ―ン・コレクション展’(10/8~1/22 西洋美)。ピカソは
西洋絵画におけるアインシュタインのような存在だから、まだお目にかか
っていない作品がみれるのは本当に楽しみ。
スペインのバルセロナへ行ったのは1982年、当時スイスのジュネーブに
住んでいてクルマで南フランスから地中海をみながらスペインに入った。
バルセロナでの観光の目玉はガウデイのサグラダ・ファミリア(聖家族教会)
とグエル公園だったが、ピカソ美にもでかけた。そこに驚愕の作品があった。
ピカソが16歳のときに描いた‘科学と慈愛’。こんな正統派の画家が手がけ
るような絵をこの歳で描いちゃったの!?やっぱりピカソは天才だわ、素直
にそう思った。
この絵から4年後に描いた自画像がパリのピカソ美にある。‘青の時代’では
これが一番いい。この頃ピカソはバルセロナとパリを往復する生活を送って
いた。ちょっと痩せており、まだ眼光はそれほど鋭くなく不安な内面もみせ
ている。同じ年の‘大きな帽子を被った少女’をハーバード大の校内の一角に
あったフォッグ美でみたときはびっくりした。まるでルノワールの絵をみて
いるよう。ピカソは印象派から一過性の影響を受けていた。
バルセロナで遭遇した‘マルゴ’も忘れられない肖像画。赤い服を着たスペイ
ン女の圧の強さ、気性の激しさがストレートに伝わってくる感じ。この女性
の表情を思いおこさせる人物がこの絵の1年前に描かれた‘ムーラン・ド・ラ
・ギャレット’に登場する。左端に立っている上機嫌の女性。たぶん、モデル
は同じだろう。