‘黒い大理石の上の貝殻のある静物’(1940年 プーシキン美)
‘赤い室内、青いテーブルの上の静物’(1947年 ノルトライン=ヴェストファーレン州美)
静物画に描かれるモチーフには日本画との関連でハッとするものがときどき
でてくる。小さい頃、祭りがあるとき‘金魚すくい’が定番のお楽しみだった。
だから、マティスの‘金魚’にはすごく親近感がある。しかも金魚の赤が半端
でない輝きをもっているので夢中でみてしまう。マティスは金魚が好きだっ
たのかほかにも‘金魚とパレット’や‘金魚鉢のある室内’を描いている。
プーシキンは嬉しいことに国内の美術館で企画展があるときよく静物画を
出品してくれる。黒と黄色の組み合わせが大変印象深い‘黒い大理石の上の
貝殻のある静物’に魅了されている。これが描かれたのは1940年だが、
色調がよく似ているのがNYのMoMAにある‘モロッコ人たち’。左上は背後に
モスクの円蓋がみえる建物の断面で鉢植えのあるバルコニー。その下にある
のは緑の葉をした黄色のメロン。これは静物と風景を合体させた作品。全体
的には抽象画風のイメージが強いため、右の下のこちらに背を向けて座って
いるアラブ人はすぐには気づかない。タイトルをみないでみると別のモチー
フと早合点する。
スイスの美術館巡りを新型コロナウイルス騒動がおさまったら計画している
が、実際いつになるかは見当がつかない。3年後くらいにバーゼル美に寄
れると嬉しいのだが。この美術館ではみたい名画はいくつもあるが、マティ
スの‘牡蠣のある静物’は必見リストにしっかり入っている。どうでもいいこ
とだが、昨年の後半から今年にかけてよく牡蠣フライを食べ、鍋でも美味し
くいただいていいる。人気のTV番組に登場した広島産牡蠣で広島県人が
もっとも美味しい思っているのはボリューム満点の牡蠣フライだそうだ。
わが家の食卓にでてくる牡蠣の2倍はあった。
ドイツのノルトラン=ヴェストファーレン州美が所蔵する‘赤い室内、青い
テーブルの上の静物’は運よく日本で2回お目にかかった。この絵の一番の
‘センス・オブ・ワンダー’は黒い波状の線が斜めに流れる赤の色面のパワー。
エルミタージュの‘ダンス’の赤と同じくらい輝いていた。金魚といいこの室内
といい、‘赤’はゴッホの‘黄色’のようにマティスの代名詞である。