ステラの‘同心正方形’(20世紀 ワシントンナショナルギャラリー)
ステラの‘フリン・フロン’(20世紀 ワシントンナショナルギャラリー)
ルウィットの‘ウォール・ドローイング’(1993年 ワシントンナショナルギャラリー)
デイヴィスの‘ロックポートからの報告’(1940年 メトロポリタン美)
ワシントンのナショナルギャラリーはメトロポリタンのように絵画だけでな
くエジプト美術やギリシャの彫刻など世界中の美術品がみれるのと違って、
展示されているのはほとんどが絵画だから関心のポイントを絞れば効率的に
まわれるかもしれない。でも、簡単にはみれない傑作が多いため、館内では
かなり忙しい。近現代美術が中心の東館は開放的な展示空間がとても心地
よく、天井から釣り下がっているカルダーの動く彫刻などが現れると夢中に
なってみてしまう。
そして、展示室のなかにおさまっている作品のほかに通路の壁にどんと飾ら
れている作品もあるから、なんだか野外展示されているパブリック・アート
を楽しんでいる感覚になる。そんな大作で目を惹くのがミニマリズムの
ステラ(1936~)の作品。‘同心正方形’と‘フリン・フロン’、もう一点
(題名はメモしなかったので不明)。川村記念美へ通いステラの作品には
目が慣れているが、この3点もとても新鮮なイメージにつつまれる感じで
明快な色彩と形を息を呑んでみていた。アメリカの美術館でこんなに感動す
るステラに遭遇すると本当に嬉しくなる。
このステラとケリーがミックスされたような作品で思わず足がとまったのが
ソル・ルウィット(1928~2007)の‘ウォール・ドローイング’。美術
の基本的な要素である形や色を大きく変形することなく繰り返して並べてみ
せられると、なんだこれだけ?というのもあるが、シンプルなものだけがみ
せる軽快さやリズム感にも心は強く寄っていく。音楽を流してみるとすごく
晴れやかな気分になりそう。
アメリカ人のデイヴィス(1892~1964)はケリー同様、アメリカの
美術館で開眼した美術家。それに大いに役立ったのはメトロポリタンでの
展示。2008年に訪問したときはなんと8点もでていた。‘ロックポートか
らの報告’はじつに愉快な作品。子どもが無邪気に色紙を切り画面に無造作に
貼っていった感じだが、ミロの絵で味わうようなユーモラスでファンタジッ
クな楽しさがある。ミロが大好きだから、デイヴィスにもすぐ嵌った。