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Channel: いづつやの文化記号
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Anytime アート・パラダイス! ハント

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    ‘良心の目覚め’(1853年 テート美)

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   ‘ビアンカ’(1869年 ワージング美)

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 ‘幼いキリストと寺院の博士たち’(1886~90年 レスター美)

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  ‘キリストと二人のマリア’(1847年 南オーストラリア州美)

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  ‘聖なる火の奇蹟’(1893~99年 フォッグ美)

ロセッティ、ミレイと一緒にラファエロ前派兄弟団(1848年)を設立し
たウィリアム・ホルマン・ハント(1827~1910)は日本で回顧展が
開かれるほど人気のある画家ではないが、イギリス絵画の展覧会を何度かみ
ているうちにその高い画才に惹きこまれるようになった。もっとも印象深い
のがテート美にある代表作‘良心の目覚め’。描かれているのは男とかこわれ
ている妾がいちゃついているところ。でも、この女性の表情が明るく天真爛
漫なためその陰のある乱れた関係を色眼鏡をかけてみるという気持ちにはな
らない。それに衣裳や床の絨毯などのモチーフの細密な描写が目を見張らさ
れるほどのリアリティをもっているから画面の隅から隅までみてしまう。

‘ビアンカ’にも魅了され続けている。モデルの生な姿を感じさせる描写には
思わず足がとまる。着ているドレスがルネサンス風で古典画をみているよう
。シルクのつやつやした感触や手に持っているマンドリンみたいな楽器の
質感描写も目を惹く。理想化した女性像を嫌うラファエロ前派らしい見事な
肖像画である。‘幼いキリストと寺院の博士たち’に描かれたキリストはどうみ
ても美形の女姓。10人いたら10人まちがえるにちがいない。‘ビアンカ’と
同じように惹きこまれる。

‘キリストの二人のマリア’は大胆な構図で描かれたキリスト物語。これは磔刑
から3日目に蘇ったキリストが二人のマリアの前に現れ、恐れないでガリラ
ヤで自分と会うよう弟子たちに伝えてほしいと言っている場面。光輪が丸い
虹のようになっているのが見どころ。ルネサンスの時代にはこんなキリストは
描けない。こんな宗教画がイギリスで生まれたというのがおもしろい。

倉敷の大原美にベルギーの画家、レオン・フレデリックの描いた大勢の子ど
もたちが登場する‘万有は死に帰す、されど神の愛は万有をしてよみがえらし
めん’がどーんと飾られている。これを思い出させるのが‘聖なる火の奇蹟:
イェルサレムの聖墳墓聖堂’。聖堂に集まった数え切れないほど多くの子ども、
女性、男性たちが超密の状態で描かれている。大変な集中力と時間を費やして
完成させたのだろう。ハントに乾杯!


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