目白へ行くときは永青文庫のすぐ近くにある講談社野間記念館へも寄ること
が多い。バス停の目の前にあるのですっとなかへ入っていける。ここへも
何度も通った。野間コレクションの美術品の大半が近代日本画で占められ、
そのなかでもっとも多いのが横山大観(1868~1958)。ときどき
ミニ大観展が企画されので、これを目当てにでかけた。トータルすると
10点くらいみたような気がする。思わず足がとまるのが‘松鶴図’、‘白鷺ノ
図’、‘霊峰’、‘千ノ與四郎’。
‘千ノ與四郎’は千利休が與四郎といっていた幼少の頃を描いたもの。緑一色
の草木のなかに與四郎が箒をもって立っている。これほど緑が密集してい
るとビジーに感じるところだが、不思議なことに緑に取り囲まれた與四郎
を注視できる。琳派の装飾性を意識した表現がとても心地いい。
都内で川合玉堂(1873~1957)が楽しめる美術館は東近美、山種、
松岡、野間。‘夏山懸瀑’は見ごたえのある瀑布図。切り立つ岩のごつごつし
た光景や水しぶきをあげて二段を重ねて落ちる滝のパワーがテンションを
一気にあげる。じっさいにこういう滝をみると爽快な気分になりそう。
竹内栖鳳(1864~1942)の‘古城枩翠’で強く印象づけられるのは
濃い墨で描かれた松の木。城址に残った石垣の上から堀ををおおい隠す
ようにせりだすフォルムはなにか生き物がそこにいるような感じ。小舟に
乗っている人物もその不気味さが気になるかもしれない。
速水御舟(1894~1935)がここには3点もある。お気に入りは
‘梅花馥郁’。紅梅の枝の曲がり方がS字になっているのは縦の画面におも
しろ味をだすためのひとひねり。この動きが白梅の静とのコントラストを
生み出している。