美術館で行なわれたやきもの展で一番多く足を運んだのは出光。だから、
図録がたくさんある。21世紀になり2010年くらいまで‘やきものに親し
むシリーズ’が9回?あり半分ほど出かけた。おかげで中国磁器や日本のやき
ものについての知識が深まった。こういう企画展ができるのはここが膨大な
やきものコレクションをもっているからで東博の常設展示のような役割を
果たしてくれた。すばらしい!
京焼の野々村仁清の色絵茶壺に大変魅了されているが、ここにある芥子文の
茶壺には特別の思い入れがある。丸い形がじつに心地よくぐるっとまわって
みる芥子の姿も装飾性と安定感があり高揚感をかりたてられる。古九谷の
大皿をみているときも気分はかなりハイになる。緑や黄色がズドンとくるほ
ど強い力で刺激するのが‘色絵菊文皿’。これまで古九谷で感動したのは3回
ある。最初が出光のコレクションで、次が石川県美、そして2013年に
開館した箱根の岡田美でも大皿の古九谷に遭遇した。
出光佐三(1885~1981)は九州出身(福岡県)なのでやきものへの
関心は強く、柿右衛門や古伊万里の名品をたくさん蒐集した。そのなかで目
を奪われるのが柿右衛門様式の‘色絵花鳥文八角共蓋壺’、有田ややきので評判
をとっている美術館へでかけると柿右衛門にはよくでくわすが、こういう名品
はそうはない。また、佐三は古唐津にも愛着が深く一大コレクションを築きあ
げた。お気に入りは水指の‘絵唐津柿文三耳壺’。丸みのあるフォルムと柿がと
ても合っている。このところ柿を毎日のように食べている。
映画もつくられた板谷波山(1872~1963)にのめりこんだのは出光の
お陰かもしれない。霧や靄がかかったような感じがする‘葆光彩’は波山マジッ
ク。とくに参っているのがアールヌーヴォー様式を連想させる‘葆光彩磁草花文
花瓶’。絵柄にチューリップを使うのが波山流。しなやかでモダンな意匠が目に
焼きついている。