‘聖ペテロの磔刑’(1601年 サンタ・マリア・デル・ポポロ聖堂)
‘聖パウロの回心’(1601年 サンタ・マリア・デル・ポポロ聖堂)
サンタ・ルイジ・デイ・フランチェージ聖堂から北にむかって300mくらい歩いたところにあるのがサンタゴスティーノ聖堂。ここにカラヴァッジョ(1571~1610)のすばらしい絵がある。その‘ロレートの聖母’をはじめてみたときはおおげさにいうと体が震えた。
キリストを抱く聖母も跪く男女もイタリアのどこにでもいそうな人物。マリアの美しい顔と男の汚れた足の裏が違和感なく目のなかに入ってくるこの現実感がカラヴァッジョの最大の魅力、宗教画というより風俗画をみている気分なので肩の力を抜いてみられる。
最終目的地であるサン・ピエトロ大聖堂へ向かう途中ここへ立ち寄った巡礼者たちは‘おらたちと同じ格好をしたやつが絵のなかにいるだべ、ちょっとみてみるか’と口をポカンとあけて聖母と幼子キリストの姿に手を合わせたにちがいない。
かつてローマの北の表玄関だったポポロ門の脇に立つのがサンタ・マリア・デル・ポポロ聖堂、そしてこの前は中央に高さ36mのオベリスクがあるポポロ広場、このオベリスクは紀元前13世紀のもので初代皇帝アウグストゥスがエジプトから運んできた。
これをみるだけでもここへやって来る価値があるが、ひと通りみたら2点のカラヴァッジョをみるため急いでポポロ聖堂へ入った。‘聖ペテロの磔刑’と‘聖ペテロの回心’が飾ってあるのは主祭壇左手のチェラ―ジ礼拝堂。どちらもペテロはひっくり返る形で描かれており、光をうける体全体が強く目に焼きつく。カラヴァッジョは見る者が絵にできるだけ近づいてみることを目論んでまわりの男たちや馬を配置している。
2016年西洋美で開催されたカラヴァッジョ展に登場した‘洗礼者ヨハネ’はちょっと引っ込み思案な性格を感じさせる若者がモデルをつとめている。この絵があるコルシーニ美はラファエロの有名な‘ガラテアの勝利’が描かれた別荘ヴィッラ・ファルネージの目と鼻の先に位置するこじんまりとした邸宅美。
訪問したときは想定外の休館日でガックリ!だが、4ヶ月後に開かれた大カラヴァッジョ展(2010年)で運よくリカバリーできた。ミューズに感謝。