団体のツアーに参加してヴァチカン博に入館するときは最後のシスティーナ礼拝堂でミケランジェロの天井画をみる時間を多くとるため、その前の彫刻のある展示室などは長くとどまらずどんどん進んで行く。だから、ルーヴルやメトロポリタン同様、2回くらいでかけると図録に載っている名作を見逃さずにすむ。
古代エトルリアでつくられた存在感のあるブロンズ像‘トーディのマルス’ははじめてのときは目にかすりもしなかった。前5世紀頃エトルリアにもこんなすばらしい彫刻があったとは!強く印象に残る端正な顔立ちは‘デルフォイの御者’を思い起こさせる。
ローマ時代の皇帝の彫像でよくお目にかかるのが初代皇帝アウグストゥス、右手をあげるポーズは権力の象徴。これは19世紀妻リヴィアの別荘跡から発見されたもので、もとのブロンズを寡婦のために大理石で模刻した。
‘ラオコーン’や‘ベルヴェデーレのアポロン’などがある八角形の中庭には一見すると古代ギリシャの彫刻と思ってしまうものも展示してある。その傑作がカノーヴァ(1757~1822)の‘ペルセウス’。メドゥ―サの首を高くかかげるペルセウスの勇者ぶりについみとれてしまう。カノーヴァは本当にスゴイ彫刻家。
時間に余裕があると‘ピーニャの中庭’でくつろぐのも一興、中央に置かれているのがイタリアの現代彫刻家、ポモドーロ(1926~)の‘球のある球体’、地震によってできた大地の裂け目をイメージする。同じような作品とヴェネツィアのグッゲンハイム美や福山市美でも遭遇した。