‘自害するガリア人’(ローマ時代の模刻、原作は前2世紀前半)
ローマ国立博については事前に入手した情報はマッシモ宮のみ、だから、ここに美術本にでていた‘円盤投げ’や‘拳闘士、‘ルドヴィシの玉座’、そして鑑賞欲をそそる‘自害するガリア人’が全部展示してあると思っていた。
ところがパンフレットガイドをみるとお目当ての‘ルドヴィシの玉座’などは別の場所にあるという。さて、アルテンプス宮にたどり着けるだろうか。とりあえずナヴォーナ広場をめざし、そこで件の宮殿を若い男性に得意のイタリア語で尋ねた(ウソです!)、意外にも話が通じテヴェレ川のほうに向かって進むとすぐわかるとの返事。
5分くらいで着いたアルテンプス宮は典型的な邸宅美術館。共通券をみせて入館した。ここにある質の高い大理石彫刻はローマ法王グレゴリウス15世(在位1621~23年)の甥で枢機卿でもあったルドヴィシ卿(1595~1632)が蒐集したもの。
そのなかで最も有名なのがギリシャ・クラシック彫刻の傑作といわれる‘ルドヴィシの玉座’、背面の浮き彫りにはニンフをしたがえたヴィーナスが、そして左側面にはフルートを吹く乙女が描かれている。柔らかく浮き上がる肌や衣装のしわののびやかな線を息を呑んでみていた。
カピトリーノ美で遭遇した‘瀕死のガリア人’同様、声を失うほど強いインパクトをもっているのが‘自害するガリア人’。前241年、トルコ西岸のペルガモン王国と戦ったガリアは敗北、敵の捕虜になることより死を選んだガリア戦士は先に妻を刺し、短剣を心臓に突き刺した。まるで悲劇で幕を閉じるオペラをみているよう。
‘ルドヴィシの大石棺’も忘れられない彫刻。棺の正面いっぱいに大勢の軍人たちが密集するを戦闘シーンが描かれている。やっつけているのはローマ軍で敗者はゴート族。この石棺の主は中央の上部にいるローマ帝国第30代皇帝デキウスの息子というのが有力視されている。