テイト・ギャラリーの現代アートをはじめてみたとき圧倒的な力で迫って来たのがシュルレアリスム。ここには名の知れた画家がずらっと揃っているが、衝撃度がもっとも大きかったのがダリの‘ナルシスの変貌’とエルンスト(1891~1976)の‘セレベスの象’。
エルンストの名が心に深く刻まれたのはこの機械装置やロボットを思わせる象のせい。この絵は明らかにデ・キリコの影響を受けている。怪物のような象の足の影はイタリア広場にできた銅像や建物の影とかぶる。そして、謎めいているのが右下の首のない白い肌の裸婦とタンクのような大きな象の組み合わせ。これに気をとられると上の左隅に描かれた魚を見落とす。
3,4点あるマグリット(1898~1967)は木目模様が使われたカプセルホテルみたいな狭い部屋で眠っている丸坊主の男が描かれた‘無謀な眠り’が一番シュール。下のパレットを垂直に立てたようなボードに並べられているのはマグリットがよく描いたモチーフ、山高帽の蝶ネクタイ、蝋燭の炎、リンゴ、鳥、そして丸い手鏡。これらが男がみている夢に次々にでてくるのだろうか。
マグリットとくればデルヴォー(1897~1994)、テイトには2点あり最初の訪問でみたのはダ・ヴィンチも描いた‘レダ’、もう一点は‘眠れるヴィーナス’。ところが、ヴィーナスのほうはなぜかずっと縁がなく今年4月横浜美で開催された展覧会でようやくリカバリーが実現した。28年もかかるとは、ああー長かった!
ピカビア(1879~1953)の‘いちじくの葉’はポスターのような作品でシルエットが印象深い。ポンピドーにも同じシルエットの‘調教師’という作品があり、どちらの男も鼻と上唇が異様に長い。長い口ひげは見慣れているが、鼻がこんなに細長いとドキッとする。