ニュー・カールスベア美にあるゴーギャン(1848~1903)の絵24点のうち、タヒチに渡ってから描いた作品は5点ほど、大半はそれ以前の作品で占めている。
これまでそのころの作品をみたのは数点にすぎないので鑑賞欲が大いに刺激された。まだ株式仲買人が正業だったころの作品はコローを彷彿とさせるような風景画やロマン派を思わせる荒々しい海洋画もあるが、印象派の影響をうけたものが多く、ゴーギャン独特の平板な画面構成はまだみられない。
‘裁縫するシュザンヌ’は見慣れたタヒチの女性とはちがい印象派の匂いのする女性画、無心に裁縫をする女性の姿はどこかドガの描く女性が頭をよぎる。これも必見リストに入れていたので長くみていた。
‘カルセル街の雪化粧’はなかなかいい絵。カルセル街はパリでゴーギャン一家が住んでいたところ。ゴーギャンは雪の光景を描くのが好きでオルセーにあるセーヌ川の雪の絵はちょっと重たい感じだが、この8年後に描いたこの作品はモネの雪の絵を連想させる明るい雪景色になっている。
この美術館の印象派コレクションはマネからシニャックまでずらっと揃っているが、ゴーギャンについで多いのがモネ(1840~1926)、全部で5点あった。そのうち、2点が手元にあるモネ本に載っていた。また、旅のガイドブックに紹介されていたのはたいそうな金額を投入して手に入れたという‘風車と小舟’、ぱっとみるとゴッホの絵のようなイメージ。
おもわず足がとまったのが‘ポール・コトンのピラミッド’、これはフランス北西部ブルターニュ半島の近くにあるベリール島にモネが滞在したときの作品。島はこの頃ゴーギャンがいたポン=タヴァンから南東に100㎞くらい下ったところに位置している。46歳だったモネは‘ピラミッド’として知られる波に浸食された岩々を6点も描き色彩の変化をとらえた。厳しい岩の表情や揺れ動く波の荒々しく描写が強く印象に残る。