シャヴァンヌの‘祈りを捧げる聖ジュヌヴィエーヴ’(1879年)
2002年に西洋美で開催されたフォッグ美展でもっとも衝撃を受けたのがモロー(1826~1898)の‘出現’、描かれているのは妖艶なサロメが宙に浮いた洗礼者ヨハネの首をじっとみつめる場面。サロメ物語がこんなショッキングな構図で絵画化されるとは、いやはやモローは本当にスゴイ画家である。
一枚の作品がほかの画家だけでなく詩人や作家にも大きな影響を与えいろんな分野で創作のインスピレーションが広がっていく。これぞ絵画の力。‘出現’はパリのモロー美でみたものだけだと思っていたら、なんとフォッグにもあった。この2点は油彩だが、ルーヴルにはまだ縁のない水彩のバージョンがある。
モローにはギリシャ神話を題材にしたものが多いが、‘キマイラ’はお気に色の入りの一枚。キマイラは怪物、いろんな姿で描かれここでは翼をもつケンタウロスになり崖の上から天空へ舞い上がろうとしている。この怪物に体を官能的にまげる裸体の女性を絡ませるところがモローの審美感覚だろうか。
19世紀パリの公共建築や教会で多くの壁画を描いたシャヴァンヌ(1824~1898)。日本では知名度は低いが、フランスの人なら誰もが知っている国民的な画家。そんあシャバンヌの回顧展が2014年Bunkamuraであった。日本でシャバンヌがまとまってみれるとは思ってもいなかったので、これはひとつの事件だった。
アメリカではワシントンナショナルギャラリー、フィラデルフィア、そしてメトロポリタンでお目にかかったが、、フォッグにも‘祈りを捧げる少女時代の聖ジュヌヴィエーヴ’がある。これはパリのパンテオンの内部の装飾画に一場面を画家自身が切り離してまた描いたレプリカ。こういうのをアメリカのコレクターはしっかり集めているのだから、流石というほかない。
ドラクロアの騎兵画が連想されるシャセリオー(1819~1856)の‘アラブの騎兵の戦い’、フォッグのコレクションと昨年あった回顧展(西洋美)のおかげでシャセリオーが少し身近な存在になった。