スペインのマドリードにあるプラド美はルーヴルやエルミタージュ同様日本との相性がとてもよく、過去に何度も名品展が開催された。西洋美では2011年にゴヤ展があり、あの‘着衣のマハ’がやって来た。今回、西洋美がスポットをあてたのはベラスケス(1599~1660)。なんと7点出品された。だから、この‘プラド美展 ベラスケスと絵画の栄光’(2/24~5/27)は見逃すわけにはいかない。
マドリード観光の目玉になっているのがプラドでの絵画鑑賞、ここで誰もが必見名画としてチェックしているのがベラスケスの‘ラス・メニーナス’、絵画にあまり縁がない人でも話の種にこの絵にはしっかり食いつく。ルーヴルのダ・ヴィンチの‘モナリザ’と同じようにこの絵は美術館の至宝中の至宝。
jでは、ベラスケスで2番目にいいのはどれか、ほかの人の好みは横に置くとして即座に答えたくなるのは初来日した‘王太子バルタサール・カルロス騎馬像’。ベラスケスはフェリペ4世やイサベル、オリバーレス公伯爵の騎馬像も描いているが、いずれも横向きの構図。これより正面をむいたカルロスのほうについ見惚れてしまう。可愛くてカッコいい騎馬像に乾杯!
ツアーでプラドに入館するときは時間が限られているので忙しい鑑賞になってしまうが、ホームグランドに来てくれると一点々をじっくり楽しめる。しかも、今回は7点も揃った。だから、ベラスケスの豊かな才能に深くふれられる絶好の機会となった。
‘東方三博士の礼拝’は光の描写がカラヴァッジョの絵を連想させるが、ベラスケスがこれを描いたのは20歳のとき。やはりベラスケスはものがちがう。息を呑む写実表現が心をとらえて離さない絵でまだみていないのが1点ある。この絵と同じころに描かれた‘セビーリャの水売り’(ロンドン ウエリントン美)。会えるだろうか。
ベラスケスの肖像画の魅力は人物の生身の感覚が伝わってくること。‘軍神マルス’に荒々しさやいかめしさは無くちょっと疲れた表情の一人の兵士が寂しげに座っている。一方、‘彫刻家フアン・マルティネス・モンタニェースの肖像’は腕のいい彫刻家の気合の入った姿が目に焼きつく。