アメリカ人だがヨーロッパで評判をとった画家が3人いる。ホイッスラー(1834~1903)、サージェント(1856~1925)、そして2年前横浜美で回顧展が開催されたカサット(1844~1926)。アメリカンウイングにまわると彼らの作品に出会うことができる。
ボストン出身のサージェントが描く女性の肖像画は等身大くらいのビッグサイズが特徴。だから、本人と対面しているような気分になる。目に焼きついている肖像に出会ったのはロンドンのテートブリテン、パリのオルセー、マドリードのティッセン・ボルネミッサ、そしてアメリカではワシントンのコーコラン、ボストン、そしてメトロポリタン。今、世田谷美に2015年ボストンを訪問したとき感激した‘チャールズ・インチェ夫人’が飾られている。
METでみた4点はいずれも縦長の大きなものだが、強力な磁力を放出しているのが‘マダムXの肖像’、色白のモデルのポーズが独時、体は正面をむいているのに顔は知らんぷりをするように横向き。この絵にはご承知のようにスキャンダラスに脚色された話がある。サージェントは最初夫人の右肩のストラップをずりさげて描いていた。これが卑猥だとして非難ごうごう。そのため今のように描き直された。
この絵を軸にした‘サージェント展’が日本で行われることを密かに期待しているが、開催にチャレンジしてくれる美術館があるだろうか。Bunkamuraに望みを託しているのだが。
ホイッスラーの‘肌色と黒のアレンジメント:テオドール・デュレの肖像’もサージェント同様、見事な肖像画。この人物はホイッスラーのパトロンでワシントンのフリーアにも2,3点ある。
アメリカの美術館ではよく出会うメアリーカサット、ここにあるのは品のいい婦人がお茶を楽しむところを描いたもの。この構図をみるとカサットがドガから強い影響を受けたとこがよくわかる。
パリに生きる人々の暮らしの断面をスナップショットのように切りとったドガやマネの風俗画、その一点々が重なってくるのがホッパー(1882~1967)の‘夫人用のテーブルづくり’。レストランやビアホールで働く女性がでてくると都会ならではの豪華な雰囲気が目の前に広がっていく。