アメリカやヨーロッパの美術館で行われた回顧展に出くわした画家には特別の思い入れがある。クールベ(1819~1877)はそのひとり。2008年、パリのグランパレとNYのMETで大規模なクールベ展が行われた。この年は1月と3月と海外旅行が続いたので両会場とも足を運んだ。
この回顧展で13点出品されたのがMETのコレクション、過去にみてないものが登場したのでどうしてクールベがこんなにあるの?という気持ちになった。驚くのはみんないい絵ということ。とくにぐっと惹きつけられるのが大作の‘村の娘たち’と官能的な表現にドキッとする‘女とオウム’。クールベの描く裸婦はすごく濃い感じ、その印象はカラヴァッジョとクリムトにもある。そのため、あまり長くみていると心臓がザワザワしてくる。
ミレー(1814~1875)の‘干し草の山:秋’は晩年に制作した連作‘四季’の一枚。真ん中にどんとあるずんぐりむっくりの形をした干し草に視線が集中する。これをみると小さい頃どんぐりの実でつくった駒を思い出す。‘春’はオルセーが所蔵しているが、どういうわけかまだ縁がない。虹がかかるこの絵が次回のオルセーでは必見リストの筆頭、はたして遭遇できる。
風刺画家ドーミエ(1808~1879)の版画をオルセーでみていっぺんに名前を覚えた。得意なのは度胸満点の風刺だけでなく、人々の生活のひとこまを哀感をこめて描いた風俗画も心を打つ。‘三等車’は古い映画にでてくるシーン、都市が発展するときに生まれる活気と同時に存在する影の部分がこの列車のなかでも同居している。