スペイン・マドリードにあるプラド美はボストン、ルーヴル、オルセー、エルミタージュと並んで日本との相性がとてもいい美術館。来月の24日からは館蔵作品による‘ベラスケス展’がはじまるので楽しみに待っている方も多いかもしれない。
プラドへ出かけるとスペイン絵画のビッグ3、エル・グレコ(1541~1614)、ベラスケス(1599~1660)、ゴヤ(1746~1828)を心ゆくまで楽しむことができ、スペイン絵画の通になったような気分になる。そのため、ほかの美術館にある作品はもうみなくてもいいと思う人もでてくる。
その一方で、いい作品がまだほかにも残っていると鑑賞に貪欲な人もいる。そんな人の期待にMETが所蔵しているコレクションは間違いなく応えてくれる。作品の質の高さは折り紙付きでルーヴル、ロンドンのナショナルギャラリー、エルミタージュを上回る。
それを強く印象づけるのが8点くらいあるエル・グレコ、唯一の風景画‘トレド風景’をはじめ、朱色の衣裳が目に焼きつく2つの肖像画‘枢機卿’、‘学者の姿をした聖ヒエロニムス’、大作‘黙示録第五の封印’など傑作が揃っている。
長くグレコの追っかけをしているが、アメリカの美術家にあるグレコはつくづくスゴイなと思う。METのほかワシントンのナショナルギャラリーは‘ラオコーン’や‘聖マルティヌスと乞食’など5点を所蔵し、シカゴ美にはこれまた有名な‘聖母被昇天’がある。また、NYの邸宅美術館フリックコレクションにも‘神殿の清め’、‘聖ヒエロニムス’など3点、ワシントンのフィリップスコレクションには‘悔悛の聖ペテロ’がある。
ベラスケスの天才ぶりを感じさせる作品が従者、フアンデパレーハの肖像画。このちょっとふてぶてしい表情に思わず足がとまり、ずっとみていた。王を描くときのように脚色をしなくていいから、ベラスケスはパレーハの内面を深くとらえている。このリアルさは尋常ではない。
スペインはいい子ども画を描く画家を多く輩出してきた。エル・グレコには‘ろうそくの火を吹く少年’があるし、貧しさのなかでも明るく生きる男の子を描いたムリーリョ、そして、20世紀の大画家ピカソも自分の息子を何度もモデルに使っている。極めつきは大好きなゴヤの‘マヌエル・オソーリオ・デ・スーニガ’。この可愛すぎる男の子をみるとゴヤに惚れ直す。