上町祭屋台天井絵‘男浪図’(1845年 小布施町上町自治会)
葛飾応為の‘関羽割臂図’(1844~54年 クリーブランド美)
以前小布施の北斎館でみた祭屋台天井絵‘浪図’が大英博物館で展示されるという話が今年初めに放送された日曜美術館にでてきたとき、イギリスの浮世絵ファンはどんな反応をするだろかと思った。おそらく、北斎は‘グレートウエーブ’のほかにこんな波も描いていたのか!とびっくりしたにちがいない。
‘男浪’と‘女浪’をあらためてじっくりみると、やはり‘男浪’のほうにぐっと惹きつけられる。どちらも濃い青の中心部分は巨大な渦巻きがトンネルのようにダイナミックに描かれている。そしてその渦巻きが回転速度を増すたびに大きなしぶきを上から下から飛び散る。まさに動画をみているよう。
大英博物館から色がよく残ったすばらしい版画が沢山やって来ているが、思わず足がとまったのが‘滝に鯉’。鯉の体が流れ落ちる滝によって分断されるというシュールな表現がなんともすごい。円山応挙にもこんな絵があることをすぐ思い出した。
北斎の魅力のひとつが花鳥画。大英博の摺りのいい13点を息を呑んでみていた。お気に入りは正面をむいた鳥が印象深い‘長春・黄鳥’、海外のブランド美術館が所蔵する花鳥画はいずれも心を打つ。ミューズに感謝!
NHKは展覧会に関連してを北斎の番組をつくったが、今回は娘の応為にも光を当てている。応為の作品は会期中5点でてくるが、チラシで気になっていたのは‘関羽割臂図’。三国志を全巻読破したのでこの絵には敏感に反応する。
関羽は毒矢で傷ついた腕を治すため荒っぽい治療をうけても平気な顔をしているのに、まわりの者は痛そうでみておれないとあたふたしている。これは記憶に残る一枚。応為もやるねぇ。