ホラーの‘擬人化された風景’(1662年以前 アシュモリアン美)
先月、西洋美で今話題の‘アルチンボルド展’をみたとき、四大元素のうち‘大気’と‘火’(ともにスイスバーゼルの個人の所蔵)がまだ展示されてなかった。とんだ肩透かし。また出かけるか迷ったが折角の機会なのでみておくことにした。
アルチンボルド(1527~1593)は‘四季’(1563年)に続いて3年後‘四大元素’を描いた。その4点のうち‘水’(今回展示)と‘火’はウィーン美術史美にあるが、残りの‘大地’と‘大気’はいまだ行方不明。だから、今展示されている4点はオリジナルの‘水’と後に制作された別ヴァージョンを組み合わせた形になっている。
たくさんの鳥で顔を構成した‘大気’はとってもわかりにくい。とくに鼻の部分。そして、口も鶏をそのままとらえるので口の形にならない。致命的なアンマッチなのが頭の髪、細い髪の毛を鳥の頭や嘴を密集させてもイメージがわかない。
これに比べると‘火’はアルチンボルドの意図が読みとれる。髪が激しく燃え盛っているのこの人物(皇帝マクシミリアン2世)の権力の大きさをそのまま表現しているのだろうとか。鋭い目とこの炎が一体化しているところがおもしろい。
‘擬人化された風景’をじっとみているとダリの絵が頭をよぎった。ひょっとするとダリの得意としたダブルイメージはこういう昔からある絵から影響を受けたのかもしれない。マグリットだって美術書でみた風景を人や動物に見立てる擬人化の手法がヒントになった可能性がある。
魚に興味があるとカンピの‘魚売り’のような作品は見てて楽しいだろう。いかにも魚屋の店先という感じで魚の匂いと海の塩のかおりが食を求めてやってきた人たちをどんどん吸い込んでいるよう。