若い頃スイスのジュネーブに住んでいたとき、クルマでミュンヘンへ行きアルテ・ピナコテークへ入った。今から35年前のこと。これだけ時が流れると記憶はほとんど残っておらず、この古典絵画を集めた美術館がどんな建物だったかすっかり忘れている。
この美術館の前には近代絵画を展示しているノイエ・ピナコテークがあるのだが、当時はまだ美術館へ行くといってもパリを観光したら必ずルーヴルを訪問するような感覚だったので、ミュンヘンの有名な美術館はアルテだけと思っていた。
今は絵画の情報はたっぷりゲットしノイエにはゴッホのひまわりやマネが描いた息子の絵などみたい作品がいくつもあるのでノイエをパスしたのは残念でならないが、こういう鑑賞と関心のズレはどうにもならない。また、ふたつの美術館のすぐ近くにはレンバッハハウスや古代彫刻美などはあるので、2度目のミュンヘン旅行をいつか実現したい。
アルテ・ピナコテークがすごい美術館だったというイメージが出来上がったのはでデューラーやルーベンスの傑作をみたこともあるが、なんといってもダ・ヴィンチ(1452~1519)がありラファエロ(1483~1520)があったから。ウィーン美術史美やドレスデン美には同じくらい感激するラファエロがあるが、ダ・ヴィンチはない。そして、エルミタージュにはダ・ヴィンチもラファエロもあるが、ラファエロは特◎ではない。
美術館でダ・ヴィンチ、ラファエロをみれるのは特別な鑑賞体験。だから、‘カーネーションの聖母’と‘カニジャー二の聖家族’を夢中でみた。ラファエロはもう一点ひとまわり小さい‘テンピの聖母’もある。次ここへ来たら時間をかけて画面の隅から隅までみるような気がする。
フラ・アンジェリコ(1395~1455)の‘キリストの埋葬’はみれどみてない状態の作品、まだフィレンツェのサン・マルコ美にある代表作‘受胎告知’にお目にかかってないときだから、記憶にひっかかりようがない。