気になっている画家との距離が一気に近くなるのは回顧展を体験したとき。プッサン(1594~1665)の場合、ルーヴルにある‘アルカディアの羊飼いたち’をみたのがきっかけとなり、1点でも多くの作品をみたいと思うようになった。
そして、その願いが何倍もの作品となって実現したのが2008年アメリカの美術館をまわっているときメトロポリタンで遭遇した‘プッサン展’、世界中の名だたる美術館から集結した傑作の数々を前にテンションが上がりっぱなしだった。
エルミタージュにもウイーン美術史美にもプッサンのいい絵があったが、ドレスデンでは2点みた。‘フローラの王国’はローマの詩人オウィデイウスの‘変身物語’を題材にして描いたもの。中央ではナルシスが壺の水面に映る自分の姿をみてうっとりしている。
プッサンがあるとついでにみたくなるのがクロード・ロラン(1600~1682)。‘エジプト逃避途上の風景’は人物を広々感のある風景のなかにとけこませるところや明るい空にたなびく雲がプッサンの描き方によく似ている。
ツヴィンガー宮殿のなかに飾られているのは古典絵画が中心だが、近代絵画のコレクションは宮殿からあまり遠くない建物で展示されている。普通のツアー旅行ではここは行かないので次回の楽しみとなった。画集にはゴーギャンや、クリムトなど目を惹くものがいくつも載っている。
最も関心を寄せているのはフリードリヒ(1774~1840)の‘山上の十字架’、非常に鑑賞欲をそそる作品である。‘雪の中の石塚’は運のいいことに2005年西洋美で開催されたドレスデン美展でお目にかかった。ドイツの美術館をまわりフリードリヒを追っかけることをアバウトに夢見ているが、はたして実現するだろうか。