ルーベンスの‘ダビデの手紙をうけとるバテシバ’(1635年)
海外の大きな美術館へ行くとどこでもルーベンス(1577~1640)の作品に出会う。一枚だけということはなく2点以上はある。何点かみたドレスデンで印象深いのは‘ダビデの手紙をうけとるバテシバ’。
昨年芸能界は不倫したタレントや音楽家、噺家が続出し週刊誌やTVのワイドショーでその顛末が事細かく報じられた。絵画の世界にも似たような話がでてくる。ルーベンスが二度目の若妻エレーヌ・フールマンをモデルにして描いたバテシバは結婚している身。夫はダビデの部下。
ダビデは強引な男だから、部下の妻だろうが好きになったらもう一直線。従者の黒人の少年に手紙をもたせてバテシバのもとに届けさせる。‘あのー、ダビデの旦那からの手紙をうけとってください’、バテシバはつきかえしたいところだが、そうもいかない。
ルーベンスがスペインにやって来たとき会ったことのあるベラスケス(1599~1660)、肖像画の名手であるが‘紳士の肖像’もなかなかいい。フェリペ4世を描くときは宮廷画家の本分をわきまえだいぶ脚色して仕上げたが、ほかの人物は素のまま。こういう絵をみるとそのことがよくわかる。とにかく巧い!
ムリーリョ(1618~1682)のやさしい聖母子像はベラスケス同様、ヨーロッパの王侯、貴族から愛された。ドレスデンでこの絵をみたときはプラドにいるような気分になった。本当に心が和む。
海外の美術館でドルチェ(1616~1686)の絵をみることはあまりない。ルーヴル、ロンドンナショナルギャラリーでみた覚えはない。そのため、どの美術館の図録にでていたかは記憶のファイルからすぐ送られてくる。この美術館の図録にもしっかり載っている。
ところが、この音楽の守護聖人チェチリアを描いた絵は当時はみているのにみてない状態だった。関心が必見リストの作品ばかりにいっていたのでみたという実感がない。このつるっとしたきれいな丸顔を見るたびに惜しいことをしたなと思う。