海外の美術館が所蔵する美術品が公開される場合、かつてその美術館を訪問したことがあると懐かしさも手伝ってすぐ鑑賞計画ができあがる。2005年、西洋美で開催された‘ドレスデン国立美 世界の鏡’ではフェルメールの‘窓辺で手紙を読む若い女’にまた会えると思うと気がはやった。
2003年中欧を旅行したときはウイーン美術史美のほかにドレスデンのツヴィンガー宮殿で歴代のザクセン候が蒐集したすばらしい絵画コレクションをみることができた。鑑賞時間は2時間しかとれなかったが、必見リストをみながら興奮状態で館内をみてまわった。
リストのなかで特◎の絵はラファエロ(1483~1520)の‘サン・シストの聖母’、ウイーン美術史美にある‘草原の聖母’同様、この絵の前に立てたことは生涯の喜び。縦2.65m、横1.96mの見ごたえのある祭壇画でまずは聖母とのご対面となるが、その時間は意外に短く目は自然に下のほうにいる天使2人にむかう。ひとりは頬杖をつきもうひとりは顔の前に両手をおき、上目づかいで聖母のほうをみている。この姿がなんとも可愛い。
ボッティチェリ(1444~1510)の‘聖ゼノピウスの生涯’は元はひとつだった板絵が現在は3つの美術館に分散して飾られている。ドレスデン美にあるのは中央に死んだ子供をよみがえらせる聖人などの場面が描かれている4番目のパネル。1、2番目はロンドンナショナルギャラリー、そして3番目はメトロポリタンにある。
ここにあるコレッジョ(1489~1534)は‘聖母と聖ゲオルギウス’と‘聖夜’、ともに大作で息を呑むほどいい絵だった。ウフィッツイやロンドンナショナルギャラリーでも心を打つ名画をみたが、ここのコレッジョが最も印象に残っている。
コレッジョに影響を受けたパルミジャニーノ(1503~1540)の‘ばらの聖母’も忘れられない一枚、じつはこの絵はちょうどウイーン美術史美で開催されていた大規模な‘パルミジャニーノ展’でお目にかかった。聖母の手や幼子キリストの体が異様に長いのはマニエリスム調であるが、それに違和感をあまり感じさせないところがパルミジャニーノの魅力。