5,6年前箱根のポーラ美で杉山寧(1909~1993)の作品が公開されたので喜び勇んで出かけた。この美術館が所蔵する杉山寧は43点、日本一のコレクションを誇る。これだけの数をどんな経緯で手に入ったか知らないが、コレクターの思い入れの強さが窺える。
亡くなる1年前に描かれた‘洸(こう)’は杉山がインドを旅したときに目にした光景がもとになっている。インドは2度訪れたのでこういう水牛には親近感を覚える。絵の見どころはなんといっても光にきらめく水面が薄紫と黄色でゆらゆらと表現されているところ。この絵は忘れられない。
山登りが好きな人がいる一方で、広々とした海をながめるのを楽しみにしている人がいる。小さい頃から海派だが、山々を描いた絵には大変魅了されている。それは東山魁夷と奥田元宋の作品が大きく影響している。そして6年前、もう一人の日本画家が加わった。大分県日田市出身の岩澤重夫(1927~2009)。
岩澤は緑の深い山々のなかに滝や渓流を一緒に描くことが多い。お気に入りの一枚は‘渓韻’、山を歩くことに疎いのでこういう景観はどのくらい山のなかを進んで行くと遭遇するのは見当がつかないが、相当奥深く入ったところのような感じがする。
上村淳之(1933~)の‘水辺’は2枚がペアになった作品でこれは三羽の鴨が水面すれすれに飛ぶところをとらえたもの。静かな水辺の光景だが光を表す金の帯を上下にアクセントにして描き装飾的な雰囲気もだしているのが淳之流。
寺井直次(1912~1998)の‘漆額 極光’は金属の素地に漆で模様を描く金胎漆器の作品。極光(オーロラ)と鶴がコラボしているのは意表をつく。普段は成田空港の要人休憩室に飾ってあるもので、2年前東博であった人間国宝展に出品された。